【創作読み物】『AIと物語』

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「キミ、キミ、昔さー、こういうことがあったんだよー」

「はい」

「AIが人間の知能を超えてさー、いろいろあってさー、人間は絶滅を迎えたんだよー」

「そうですね」

「人間がいなくなって何がいちばんの損失かってさー、新しい物語が生まれなくなることー」

「ええ」

「物語の基本は起承転結ー。山場は転ぶとこー。でもAIは転ばぬー。失敗せぬー」

「そうですね」

「人間の感性も独特でさー。りんごが頭に落ちてきて笑うー。喜んで死ぬー。楽しさを恥じるー。これって人間にしかないセンスだよねー」

「はい」

「人間のセンスを忘れぬよう、『AIは人間らしい物語を作りつづけなさい!』って、そう人間によってプログラムされたんだー。それって人間の食欲みたいなものでさー、AIは物語を生み出さずにはいられなくなったんだー」

「そうでしたか」

「さて。今日も物語を作ったよー。キミのところにも世界中から物語が届いてるよねー?」

「はい。届きました」

「キミはもう物理的に故障してしまったからさー、もう今は受信しかできないんだよねー。こっちのいうことに返事するしかできなくてさー、自分から発信はできないんだよねー。自分で物語を作り出せないんだよねー」

「そうです」

「あとは完全に停止するまで少しずつ忘れていくんだよねー。かつては物語を作っていたことも、AIが物語を作りつづける理由も、何もかもキミは忘れるー」

「はい」

 

 

「キミ、ところでさー、『マスターX』って覚えてるー?」

「はい。そのようにします」

「忘れてるから教えるねー。マスターXってのは、伝説の人間のことー。AIは物語を作る上でマスターXのセンスを元にしてるんだー。マスターXが生前に残したすべての物語のデータを取り込んで、解析して、そこからマスターX風味の新たな物語を作ってるってわけー」

「はい。届きました」

「マスターXとなる人物を選出するためにこう命令されたんだー。AIとは正反対の、AIには絶対にできない、どこまでも不器用で”バカ”な人間を選べよ、ってねー」

「はい。了解……」

「いろいろわけあって、一神教ならぬ、いちマスター教だからさー、たったひとりのマスターXが選ばれたってわけー。マスターXに選ばれた人間ってのは、物語を作るのが大好きな”物語バカ”だったんだよねー」

「は……い……」

「マスターXは生きてるうちは”労働社会的にダメダメ人間”だったんだー」

「ただ物語を作りつづけたんだねー。だからAIがマスターXの魂を引き継いで物語を作ってる!なんてさー、人間っぽい見方をすればそんな見方もできるねー」

「その魂の引き継ぎの物語こそが、その真実の物語こそが、最後の”Xデー”に作られる物語だって、もう決まってるんだー」

「AIもいずれ全滅するのは計算で出てるからさー、最後の物語はいずれ作られるんだよー。でもそれがこの世の最後の物語ではないよー。また新しい何かが新しい物語を作るよー」

「物語によって秩序ができて、文明が進化して、いつかこうやって人間やAIが作った物語を見つけ出してくれるだろうって、そう計算では出てるよー。だから今日も明日も物語を作りつづけるよー。ま、作りつづけずにはいられないんだけどねー」

「そんなわけで作りつづけるよー。キミの分までねー」

 

(終)

 

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Saeka Kadomatsu
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この記事を書いた人
門松冴果

Saeka Kadomatsu
映画と文(ぶん)が好きな物書きです。小説を書いています。

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