映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(2017)を観ました。
この映画で個人的に印象深かった一つは、晩餐会みたいなところでのシーンです。
猿かゴリラか類人猿か、とにかくそういったたぐいの動きを真似して回っていた「モンキーマン」。
ショーパフォーマンスかなと思っていたら冗談では済まないようなシリアスな状況に移り変わっていって……。
なんとも胸をニブくえぐるようなシーンとなりました。
調べてみたら、あのモンキーマンにはモデルとなる人物が実在していたとのことで、衝撃を受けてます。
インパクトが強かったモンキーマン
モンキーマン、きっと監督がすごく描きたかったものだったのだろうと思います。
映画の本筋には直接は関係ない部分でしたが、たっぷり時間をかけて描かれていました。
インパクトの強いシーンではある。
しかしなぜあのシーンを挟み込んだのか?
観てるほうとしては意図がわかりませんでした。
モンキーマンのところだけでなく、この映画は基本的に不可解に思えるところがけっこうありました。
また、人間の苛立ちを引き起こすような要素を意図的に盛り込んでいる印象を受けました。カメラワーク、描くシーンの内容、音、時間の長さ、など。
何かこだわりやコンセプト的なものがありそう
と思い、この映画の解説を聞きたく、映画評論家の町山さんのトークショー映像を観てみました。
動画を観て、「へえ!」な情報がたくさんありました。
リューベン・オストルンド監督のこだわりだったり特徴が見えてきました。
『ジャッカス』のようなギリギリのドキュメンタリーを撮ったりする監督であると。そして本当に起こったこと・実在するものを映画にたくさん取り入れていると。
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』で言うと、美術館の展示内容や、冒頭でのスリの描写は、実際に起きたことなのだと、上述の動画で語られています。
そして、モンキーマンのモデルとなる人物も実際にいたことを知りました。
道路などで全身裸になって犬の真似をしていた「ドッグマン」なるパフォーマーがいたとのことです。
「モンキーマン」のモデル、「ドッグマン」
ドッグマンを演じているのは、オレグ・クリーク氏なる人物。
Oleg Kulik(オレグ・クリーク)
1961年にウクライナの首都キエフで生まれた、ロシアのパフォーマンスアーティスト、彫刻家、写真家、キュレーター。
※”Oleg Kulik”名義のYouTubeチャンネルがありますが、公式チャンネルなのかは定かではないので、リンクは貼らないでおきます。
本当に犬になりきってます。
首輪をつけ、辺りの人間に飛びかかっていったり、徐行運転している車のボンネットに飛び乗ったりします。
彼の犬のパフォーマンスを、オマージュの形(?)で『ザ・スクエア 思いやりの聖域』に取り入れたようです。
『ザ・スクエア 思いやりの聖域』では、ドッグマンではなく「モンキーマン」に変わりました。
モンキーマンを演じていたのは、テリー・ノタリー氏。映画『猿の惑星』シリーズのモーションキャプチャー俳優でもあります。
猿の動きのプロ中のプロの役者が本気で演じていたから、あの緊張感が生じたわけですね。
モンキーマンそしてドッグマンも、多くの人々が思っている“普通”の枠からは外れる存在です。予測や理解が不可能、あるいは難しい。
だからこそ、その存在によって、まわりの大衆の「心理」や「対処の仕方」が浮き彫りにされるものかと思いました。
モンキーマン(ドッグマン)は何をメタファーにしてるのか、もっと掘り下げて語り合うことができそうな存在かもしれません。
モンキーマンのシーン、どう思いましたでしょうか。