MAD MAXシリーズ最新作の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観ました。
相変わらずギリギリでいつも生きているマックス。
主役のマックス役がメル・ギブソンからトム・ハーディーに代わりましたが、特に違和感はなかったです。
今回も手に汗握る展開で興奮しました。
マッドマックスシリーズの魅力
マッドマックスシリーズは全部観ています。
私は車・バイク好きというわけでなく、バイオレンス映画はそれほど観ないのですが、マッドマックスはそんな私でもグググッと見入ってしまう映画ではあります。
あの殺伐として理不尽な世界観、迫力あるカーチェイス、シンプルなスリルと恐怖、キャラ立ちしている悪役や登場人物たち。が、ある種の魅力的な世界観を構築しています。
また、ぬるさ一切なしの絶望の中で味わう鋭い爽快感が、この映画の醍醐味かと思います。
夢や愛や希望を語る映画ももちろん(良い作品であれば)心を満たしてくれますが、そういうものをばっさばっさ斬り捨てるような本作もまた別のよさがある。
マッドマックス1・2の頃はアウトローな雰囲気でまだ現代らしさがあります。
3・4は文明が退化し、世も末な荒廃とした環境の中でストーリーが展開します。
そんな中で主人公を追い詰めては戦うわけで、悪役が「アウトロー」や「荒廃とした」環境に負けてしまうような薄い存在だったら、からっきし成り立たなくなってしまう。
悪役の存在感は大事ですが、その点、マッドマックスシリーズは、悪役の印象・インパクトが強いです。またキャラクターが立っています。
悪党たちのインパクトが強く、キャラ立ちしている
1と2は悪党たちの怖さに、「現代的なリアルさ」があります。
3と4は古代のような雰囲気があって非現実的な雰囲気なので、敵を見るときも「フィクションのフィルター」のようなものがかかります。
1・2と、3・4とでは、怖さの性質がちょっと違うかもしれません。
1・2の敵は、治安の悪い外国の街にたむろしてそうなリアルさがあって、妙に生々しい。
目つきというかオーラというか、「あ、マジでヤバいほうのだ」みたいな雰囲気を醸し出しています。
1の頃は低予算だったためにリーダー役以外はホンモノを使っていたという噂があります。
だとしたら「マジでヤバい」感が出ているのも納得です。
1に出てきた悪党たちは、キャラの色が濃かったです。
ナイトライダーのザ・破天荒なキャラ、トーカッターのいやらしくねちっこい感じ、ババの冷酷な目つきとか、ジョニーの小物的単細胞な感じとか、ほかにもハート眼鏡をかけているモブキャラがいたりなんかして、それぞれキャラ立ちしてます。
悪者ってパッと目立つある種の魅力がないと成り立たないかと思うので、その点彼らは悪者としての魅力がありますし、そういうアクの強い人間たちが集うものだから観てる側を圧倒させる力があります。
あと、悪党ではないですがマックスの元同僚のグースも人を引きつける力があって印象に残っています。
1の途中で亡くなってしまう警官です。
すぐカッとなるんですが、その「陽」な性質とシャープな容姿がなんともこうキレのいい挙措となって、バイクをはじめとする身のこなしが様になってました。
漫画化してさらに特徴を際立たせたら、一定以上の人気を得るようなタイプではなかろうか。特に女性から人気が出そうな感じはしています。
2では何といっても赤髪モヒカンのウェズがインパクトがあります。
彼のボスであり見た目が特徴的なヒューマンガスという存在がいるんですが、ヒューマンガスはそのポテンシャルの割には控えめな感じで終わってしまった印象です。
ヒューマンガスはその見た目に「ドラクエのあらくれ補正」があったからか(似てるのです)、そこまで悪には見えなかったし。
ウェズは明らかにボスであるヒューマンガスよりも見せ場が多かったし目立ってました。
ウェズには狂気がありました。
悪のカリスマ性たっぷりのウェズ。
そのウェズの愛人である金髪の美しい男性も存在感がありました。
すぐやられてしまうしセリフはなかったけど、きっと映画を観た人の中での認知度は高い存在ではないかと思います。
1と2の悪党たちが自分の中では印象が強かったのでピックアップしましたが、3にも4にも一風変わった敵キャラは登場します。
マッドマックスの影響はあちこちに
昔読んだ漫画で、『湘南純愛組』(GTOの前身)か『BOY』だったと思うんですけど、バイクの前輪を軸にして後輪でぐるっと回り、地面に黒い円を描くっていう描写がありました。この技が日本に入ってきたキッカケが、何を隠そうマッドマックスだったんですね。映画内で悪党が円を描くシーンがあります。
この技、マックスターンと呼ばれてるんだとか。
↑マックスターンの動画。当集会は、その名も「Mad Max Convention 2016 in Tsukuba」
マイクでしゃべってるのは、マッドマックス1に出演していたポール・ジョンストーン氏(悪党ハート眼鏡役)。マックスターンをきめているのは当時スタントをしていたディル・ベンチ氏。
マッドマックスは当時のライダーたちに衝撃を与えた作品だったようです。
また、のちの映画や漫画に多大な影響を及ぼしました。有名どころでは北斗の拳とか、鳥山明先生とか。
鳥山先生は『MAD MATIC』というタイトルの読み切り漫画を描きました。
鳥山先生が描いたキャラで、マッドマックスの登場人物に似ていると思うのがいくつかあります。ピックアップしてみます。
ドラクエ「あらくれ」 → ヒューマンガス?
さっきもちらっと触れましたが、ドラクエのモブキャラである「あらくれ」は、マッドマックス2の敵側のボスであるヒューマンガスに似てます。
ヒューマンガスがモデルになってると思います。
仮面被っててほぼ裸で筋肉もりもり。
ドラクエ8のモブキャラ → ジャイロ?
同じくマッドマックス2に出てくる自称「マックスのパートナー」のジャイロ。
彼にそっくりなモブキャラが、たしかドラクエ8あたりに出てきたような気がします。
パルミドあたりにいそうな、ガラの悪い、割と大量生産されてる名前のないモブキャラ。
面長で体つきがほっそりしていて目の下にクマがある感じの。
(ちなみに:ジャイロ役を演じた俳優が3作目のマッドマックス サンダードームにも別役で出演しています。どちらも小型飛行機を操縦してるので最初は同一人物なのかと思いましたが、まったくの別人設定なんですね。)
リクーム → ウェズ?
ドラゴンボールのギニュー特選隊のリクームが、赤髪モヒカンのウェズに似てないこともない。
尻が出ちゃうところもリンクする(片っぽは意図的に出してるけど=ウェズ)。
『SAND LAND』の世界観
わたしがKing of 漫画だと思っている大好きな漫画『SAND LAND』(鳥山明先生作)を読んでると、どこかマッドマックスを彷彿とさせるものがあります。
なので鳥山先生はマッドマックスが大好きなんじゃないかなと予想しています。
SAND LANDはとてもとてもおもしろい漫画です。
マックス「希望なんてない」
主人公マックスは非常に厳しい状況に身を置いています。
救いようのないつらい経験をした上、いつも危険に身をさらし、生ぬるい感情を捨てて傷で傷を治すかのように過酷で孤独な道をひた走ります。
そんなハードボイルドなマックスが生きる世界も常に無慈悲で殺伐としています。
シリーズ4作目の『怒りのデス・ロード』では、緑の地(楽園)を目指すフュリオサ隊長に対して、マックスは「希望なんてない」と言い切ります。
この「希望なんてない」のがこの映画が一貫して描きたかった世界の一つではないかと思います。
とことん絶望的なリアリズム。
そこがこの映画が支持される要因にもなっているところもあるのではないかと思います。
夢や希望なんてないという考えに、共感する人もいることでしょう。
そういう人でもあるいは、部分的にせよ過去にせよ夢や希望を心の中に持っている(た)かもしれません。
夢や希望を信じて頑張ってきたけどそれでもむくわれなかったとか。
自分の力ではどうすることもできない身を切られるような経験をしたことがあるとか。
たとえばそういう経験をしたことがあるならば、現実主義者になるのもわかります。
「世の中は不条理なんだ」と考えれば、スッと心の整理がつきます。
なので徹底して絶望的だったり夢や希望に夢を見ない作品って、観る人によっては誠実な作品となり、共感や救いになってることもあると思います。
映画マッドマックスシリーズは、「希望なんてない」部分を独特の世界観でふくらませて、手に汗握るスリリングを味わわせてくれる映画です。
長くなりましたが、存在感のある悪役らと荒廃とした環境の中で作り出される不条理な世界観の中で、たたかいとカーチェイスから得られる鋭い爽快感が、マッドマックスシリーズの主たる魅力となっているように思えました。