ドキュメンタリー映画『イカロス』の感想

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ドキュメンタリー映画『イカロス』(2017)を鑑賞。

ロシアの国家ぐるみのドーピング問題について追った作品です。

ネットフリックスオリジナル作品です。

 

「出来過ぎ」みたいな作品でした。ドキュメンタリー作品としてあまりに「整っている」感。

まるで用意されて撮られたぐらいに整っている。そしてフィクションのような黒い世界が渦巻く。

けれども、これが作り物ではなく、リアルな記録だという事実に、すごいと思うのと同時に何かグラ~と歪むような不安定な気持ちにさせられました。

まるでアノニマスの面かなんかを見てるときのような不安定さ。

アノニマスの面

アノニマスの面

 

 

この作品が撮られる経緯がこれまた嘘のようにすごい話で。

ドーピングの人体実験のドキュメンタリーを撮っていたアメリカの撮影隊。

その実験について、ロシア反ドーピング機関所長の助けを借りる。

所長は実は国家ぐるみのドーピングに加担していた超重要人物だった。かくして撮影隊は国際スポーツ界を揺るがすスキャンダルの前後裏側を重要人物のそばから追うことになる。

 

ロシアの例のドーピング問題、ここまでカメラが追っていたとは。しかも暴露の前から。

“暴露人”となる科学者の証言もたっぷりとおさめられている、貴重な記録です。

この『イカロス』は、フィクションの世界のようなダークで一般市民からは「遠い話」と、本来は隠れてなければならない暴露人の証言を「間近」で見つづけるのとで、そこが度の合わない望遠鏡をのぞいているようで、ぐらりとした不安定な感じを覚えた一因かなあと思います。

 

 

ロシアの国家ぐるみのドーピング問題については、当時ニュースで耳にすることはありました。

でも自分で調べてみることはなかったです。

騒動後のリオオリンピックの開会式で、「ロシア」でなく、ちがう団体名でロシアの選手たちが入場しているのを見て、「へえ、出られたんだ」ぐらいの気持ちでなんとなしに見ていた程度でした。

 

なので、ドーピング検査パスの詳しい手口やいきさつなどの各情報は、このドキュメンタリー映画から初めて知りました。

それらは実際に工作に携わっていた所長本人の口から語られています。

また、のちの暴露人である所長は、胸の下をナイフで切られ、自殺未遂したように繕われ、精神病院に送られたことがあるとも語っていました。

そして所長が暴露した際、「彼は精神病棟に入っていたことがあって……」と、暴露は精神疾患による妄言ともとれるような声が他方から上げられました。

所長は映画の中にたくさん登場します。インタビューや制作陣とのコミュニケーションの様子が数多く映ります。所長の精神に疾患があるようには見えなかったです。

所長の証言がすべて事実とすれば、これはいよいよ「おそロシア」の冗談が笑えなくなる。それぐらいの闇です。

 

ロシア国家がドーピングに関与している証拠がたくさんあがっており、ロシアのドーピング問題は根が深すぎてすべてを追うことはできない、とまで映画内では言われています。

 

アメリカだからこそ、このドキュメンタリー映画を公開まで持っていけたのだろうなと思います。

大きな力に迎合することない毅然としたドキュメンタリー作品には、ただ拍手を送るしかないです。

この国際的スキャンダルが公になったのは、ドイツの公共放送局の報道が発端だったんですね。(ドイツの公共放送局により、「2014年ソチオリンピックにおいて、ロシアによる国家主導のでドーピングプログラムが実施された」と報道された)

なぜその情報をドイツの公共放送局がつかむことができたのか、今度はその辺についても知りたくなりました。

当時はなんとなく聞き流していたニュースでしたが、一本の映画鑑賞によってどんどん知りたくなっていくという。

これも映画の力。というより、『イカロス』というドキュメンタリー作品の力か。

 

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