エッセイ:変顔するサラリーマン

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~故・伊丹十三監督風の文体(というよりは語尾)で書いてみるエッセイあるいはコラムのようなもの~

 

私が小学生のとき、ちょっとした地域のスターみたいな人がいた。
営業マンらしき男性(以下、「彼」とも呼ぶ)であった。

 

下校時刻くらいの時間帯になると、彼はよく営業車で小学校の通学路を通っていた。

この営業マン、通学路を歩いてる小学生を見かけるやいなや、必ず「あ」と大きな口を開いて走り過ぎていく。
車のハンドルを握りながら、晴れの日も雨の日も「あ」の口を小学生に披露して去る。

世の中には変顔がキマるタイプとそうでないタイプがいるが、この営業マンに至っては「あ」の顔がとてつもなく面白くキマるタイプでしたね。
全力で「あ」の顔をし、「あ」の顔をして一番おもしろいところまで極めている。
陽気で絶妙な表情であった。

面白い営業マンに向かって、小学生も同じように「あ」と口を開いていた。
小学生と営業マンの一瞬の挨拶が密かなるブームとなっていた。

彼の車が遠くからやってくるのが見えると「あの人だ!」「あのおじさんだ!」と男子も女子もみんな興奮し、すれちがう一瞬に「あ」の挨拶を交わしたものであった。
小学生たちはそれで愉快に笑っていた。

おそらく彼はその通学路を歩いている小学生全員と「あ」の挨拶を交わしていたと、私の中ではそう結論づけております。

2つ上の先輩の誰かの父親だという噂を聞いたことがあるが、「あ」の人の素性は知らなくてよいのである。

誰の父親だろうが、たとえ大きな会社に勤めてる人であろうがそうでなかろうが、「あ」の挨拶する人として(私のところの通学路で)一世を風靡したことが何より輝かしいステータスである。少なくとも私はそう思う。
小学生の笑いと人気をとるのはすごいことです。

オリジナリティってこういうことでしょうか。

「あ」の挨拶をするという特に意味のないこと、しかしそれをやりつづけることによって人気やブームに結びつくこともある。

これはクリエイター活動をしている我々にも何かヒントになるかもしれぬ、と私は思うのであります。

 

 

当記事は、以前自分が別サイトに書いた記事の移転になります。
別サイトでの公開日:2019/10/12

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Saeka Kadomatsu
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エッセイ
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この記事を書いた人
門松冴果

Saeka Kadomatsu
映画と文(ぶん)が好きな物書きです。小説を書いています。

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