エッセイ:誰かに作ってもらったほうが美味しい?

おにぎり エッセイ
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~故・伊丹十三監督風の文体(というよりは語尾)で書いてみるエッセイあるいはコラムのようなもの~

 

雰囲気には流されたくないと思っている者です。
雰囲気を味わうのはよい。流されたくはない。そういう考えのやつであるとお考えください。

 

ところで先日、映画『かもめ食堂』が観たい気分になり久しぶりに鑑賞した。

「フィンランドのカモメはでかい」の語りと、まるっとした鳥のアップから映画がはじまる。のんびりゆったりした邦画である。

 

タイトルに”食堂”が入っていることからも想像できますとおり、この作品には食べ物が多く登場するのである。
コーヒー、シナモンロール、かもめ食堂の看板メニューのおにぎり、とんかつ定食、焼き鮭の定食、など。

食べ物とともに、食べ物に関する自論のたぐいも出てくる。

「コーヒーは誰かに淹れてもらうのがおいしい」と謎のフィンランド人男性がいい、「おにぎりは誰かに作ってもらうのがおいしい」と主人公の日本人女性がいっていた。

ああ、これはあるかもしれないな、と私はにわかに思ったのであります。

 

というのも、私としては、実家の母親が握ったおにぎりは自分で作る物よりもおいしいと感じる。
そしておにぎり以外にパッと思い浮かんだのが、母が皮をむいた果物はおいしいということである。

りんご、梨、柿など、実家で母がカットしたそれらはおいしい。

おにぎりを握るのにしても果物の皮むきにしても、人の手が触れるものであり、人のぬくもりが感じられることによって、よりおいしく感じるのだろうか。
と、一瞬私は不本意ながらそう思ったのでありますが、これはどうやら違うぞとの結論に至った。

 

結論からいえば、そもそも実家の食材はふだん自分が使うものより素材がよい、という事実があったのです。

 

私の故郷は「田舎に泊まろう」の撮影がきたほどには田舎である。

田舎ゆえおすそわけやらそういった文化が盛んである。しかも実家は商売をやっておりますのでお得意先や商売でつながりのある方々とお歳暮やお中元のやり取りが多くあったりする。そんな中で、美味しい名産が贈られることも多いわけです。

果物についていえば、箱に詰まった、ギフト用に選定された良品種の果物が贈られてくることもある。
それでなくとも親戚や知り合いがおすそわけしてくる果物ひいては食材はやはり、人にあげようとする物なので物がよいのですね。

実家のおにぎりもよく考えてみれば、使う米は地元農家のよい米。海苔は海産物屋の焼きのりであるし、中に入れる具は塩ウニだったりするのだがこれは地元三陸の良質な昆布を食べて育ったウニをその道ウン十年の職人が塩をふったものであったりする。

 

実家がお高い物を購入しているわけではございませんが、それでもいただきものや地元での流通で良素材がそろってしまう機会はある。

私がいま日常的にスーパーで購入しているそれらとは素材がちがっていたのだ。それは、実家の果物やおにぎりがうまいのも当然ではないかとなります。

というわけで、私の「おにぎりは実家で握ってもらったほうが~」や「果物は実家でむいてもらったほうが~」うまいのではないかなどと思った背景には、そもそも素材の品質のちがいがあったとはいえる。

 

とはいえ、誰かに作ってもらったほうがうまい、のは、ある程度あるにはありましょう。

単純に相手の腕前が優れていればそれはおいしいし、そうでない人が作った物でも自分にとってデレデレするような相手であれば”デレデレ補正”がきいておいしく感じることもありましょう。
それから自分がものすごく苦しい状況だったり飢餓のような状況だったり、そんな心身のコンディションや環境の中で他人の温かい料理が心に染み入ることもありましょう。

先の『かもめ食堂』での主人公の「誰かに作ってもらったおにぎりはおいしい」も、主人公の父親がぶきっちょながら作ってくれた思い出があっての発言ではあった。

 

ここで一ついわせていただけるのなら、大事なのは、いっしょくたに「誰かに作ってもらうとおいしい」と”雰囲気で”包んでしまわないこと。である。

雰囲気で包んでしまうと、その背景にある環境やコンディションのちがい、バイアスなどに、目がいかなくなってしまおう。

「誰かに作ってもらうとおいしい」、そう語るほうが人懐っこい感じで親しまれやすそうですが、この件に限らず「なんとなくいい雰囲気だから」で発言したりしていると、雰囲気のない新しいことやイレギュラーなことに遭遇したときに判断の軸が見えずに混乱しそうな気はしている。
水物の雰囲気に振り回されることなかれ。

 

まあ、何もかもドライに構えていては味気なくなるのであります。
というようなことからも、雰囲気は味わうのはよし、流されないようにはしたい、と当方、考えます。

 

 

当記事は、以前自分が別サイトに書いた記事の移転になります。
別サイトでの公開日:2019/10/23

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この記事を書いた人
門松冴果

Saeka Kadomatsu
映画と文(ぶん)が好きな物書きです。小説を書いています。

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