2013年の秋に栃木県の日光へ旅に行ったときの話である。
当時閉鎖間近だった日光猿軍団のショーを観てきた。
日光猿軍団の公演は2部構成であった。
―1部は子猿&若手猿たちによる可愛い出し物というおもむきであり、
―メインである第2部は、年配の男性のトレーナーと、ベテラン風味の5匹のお猿たちによるショーであった。
5匹のお猿たちは、カメやパンダやカタツムリの衣装を着ていて、なんとも愛くるしかった。
カタツムリの衣装を着ていたお猿などはすっかりカタツムリになりきっていて、ノソノソとはいつくばって移動していた。その演技にはただただ感心したのであります。
2部のショーに出演していた5匹はおそらく選抜組のお猿たちといったところでしょう。よくトレーニングされていて、技なども持っていて、場馴れしている様子もあった。
その中でも特に目立っていたのは、カメの格好をしていたお猿であった。
そのお猿は小さい頃から狭い場所に入るのが好きで、大きくなってもその癖が抜けなかったらしく、公演中も舞台の上に置かれたフタ付きの専用ボックスに基本は入り込んでいる。斬新です。
ときどきフタを開けてはチラッと観客の様子をうかがいます。
その行動が可愛らしく、しかも様子見をする回数やタイミングが抜群にちょうどよくて面白いのであります。
このカメの格好をしていたお猿は、ボックスに入っているだけでなく、呼ばれればちゃんと出てきて、はしご登りを披露したりと、芸達者でもある。
自身の出番が終わった後はまた専用ボックスに戻っていく。その際には必ずフタを勢いよく「バン!」と閉める。このぞんざいなフタの閉め方もなんとも面白くて笑ってしまうのである。
そして、このカメに扮しているお猿の十八番ともいえる鉄板ネタが、その名も「かめさん」。
「かーめさん」と呼びかけられるとポーズを取る。
片手を上げ、片足を後ろに引いてつま先をチョンと床につけるポーズである。
トレーナーや観客が「かーめさん」と呼びかけるたびにこのポーズを取る。
最初は「おお、ちゃんと反応してすごいなあ」ってなもんでしたが、何回呼ばれてもやるものだからだんだん面白くなってくる。
やがて観客は吹き出してしまうくらいに面白くなります。
そして、ここがお猿の凄いところなのですが、ときどき外してまいります。
トレーナーが「かーめさん」と言っても何も反応せず、間をあけて思い出したようにポーズを取る。するとトレーナーが「今さらおせえんだよ」とツッコむ。すると笑いが起こる。
後半のほうでは、「かーめさん」と呼ばれても無視して一旦ボックスに入り込み、しばらくしてからボックスから出てきてポーズを取るという応用まで見せてくれた。しかもその「ためる」間なり、出てくるタイミングなりが、絶妙によい。
これには大笑いであったが、感動すら覚えましたね私は。
笑いのなんたるかを把握していると思えるほどのお笑いクオリティを見せつけてもらった。
そして、この日に見に行っていたお客さんで、笑い方が面白いお母さんがおられた。
お母さんの明るい誘い笑いで、会場はさらに面白くなってしまうという。
こういうお客さんの存在は演じている側もありがたいのではないだろうか。
劇が終わった帰りに売店に寄ってみたら、売店の人が「今日、かめさんで大ウケしてたよ」って別の店員に話していた。ほどに大ウケしていた。
日光猿軍団のショーは、本当に面白くて楽しくて素晴らしいショーだった。
惜しまれながら2013年いっぱいをもって閉園となった日光猿軍団。
その後、2015年に「日光さる軍団」と、名称のみ継承した別施設として、別経営者のもとで再開業されている。

↑お猿のエンターテイメントパーク
(※ちなみに先述のショーの様子や感想などは直後にブログに書いていたものなので、当時のフレッシュな記憶そのままであります)