アマタザキ
『アマタザキ』(英:AMATAZAKI)は、現代と異世界を舞台にした長編ファンタジー小説。
目次 |
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1 あらすじ |
2 登場人物 |
2.1 シュトウ界(主人公が生まれ育った世界)のキャラクター |
2.2 カムイ界(異世界)のキャラクター |
3 舞台設定 |
4 秘術 |
4.1 第一の秘術「移界」 |
4.2 第二の秘術「蘇生」 |
4.3 秘術の書 |
5 呪力 |
6 ジェセルス軍 |
6.1 ジェセルス軍の階級 |
7 小ネタ集 |
8 関連リンク |
あらすじ
高校一年生の首藤愛里は、田舎の祖母の屋敷で謎の美女・ミレアと出会う。
ある日、天裁崎(あまたざき)を訪れた愛里は二つの岩の隙間からのぼる朝日の光を浴びて異世界へとワープしてしまう。
ヤードという名の親切な青年から、そこが「カムイ界」であると教えてもらう。
時をおかずに、ジェセルス軍からあらぬ容疑をかけられる。人望の厚いライズ中将とお調子者のイル二等兵が愛里を気にかけるものの、圧倒的存在感を誇るジェセルス将軍は愛里の命を狙う方向へと動きだす。
炎や氷の呪力を操る兵士がいる中、果たして愛里はジェセルス軍から逃げきり、元の世界へ帰還することができるのか。
登場人物
シュトウ界(主人公が生まれ育った世界)のキャラクター
- 首藤愛里(しゅとうあいり)
- 本作の主人公。高校一年生。東京で父親と二人暮らしをしていたが、父親の死をきっかけに田舎の祖母の家に引っ越す。
- 首藤トヨ江(しゅとうとよえ)
- 愛里の祖母。毎日和装で生活する。きびきびとした元気な女性。訛りのきつい話し方をする。
- 首藤光良(しゅとうみつよし)
- 愛里の父。心筋梗塞で亡くなる。仕事熱心で実直な性格だった。
- 首藤光一(しゅとうこういち)
- 光良の兄。首藤クリニック院長。子供がいないので姪である愛里を我が子のように気にかけている。
- 首藤百合子(しゅとうゆりこ)
- 光一の妻。夫婦共に面倒見の良い気質。
- 加山久子(かやまひさこ)
- トヨ江の屋敷の家政婦。愛里にとっては親戚のおばさんのような存在。
- 神宮寺(じんぐうじ)
- トヨ江の屋敷の警備員。寡黙な性格。
カムイ界(異世界)のキャラクター
- ミレア
- 愛里たちの住むシュトウ界へと移界して来た美女。ミステリアスな雰囲気が漂う。カムイ界へと戻る前日に、車に轢かれそうになった愛里を庇って命を落とす。黒髪。
- ヤード
- ミレアの兄。学者。古代文字で書かれた「秘術の書」を読み解き、秘術を復活させた。温厚で誠実な人柄。一人カムイ界へやって来た愛里を懸命に守ろうとする。青髪。
- ジェセルス
- ジェセルス軍の将軍。ミレアの許婚。圧倒的な存在感を誇り、血気盛んで猛々しい。水属性の呪力者。紫の髪。
- ライズ
- ジェセルス軍中将ながら愛里とヤードの逃走に手を貸す。容姿端麗で冷静沈着。風属性の呪力者。プラチナブロンドの髪。
- イル
- ジェセルス軍二等兵。ライズ同様、愛里たちを助ける。明るくてお調子者。観察眼が鋭く頭がきれる。特殊な呪力の持ち主。オレンジの髪。
- フィレン
- ジェセルス軍中将。軍随一の洒落者でキザったらしい男。ライズとイルをつっけんどんに扱う。炎属性の呪力者。銀髪。
- ヴォルブ
- ジェセルス軍少将。酒焼け声の大男。格下の地位であるイルに「石頭」と揶揄される。氷属性の呪力者。スキンヘッド。
- フスト
- ジェセルス軍大佐。ライズに強い憧れを抱いている。金髪。
- トマリアマ王
- トマリアマ王国の君主。ジェセルス軍はじめ国民から大いなる支持を得ている偉大な王様。女好きとの噂がある。
- キリア王子
- トマリアマ王の三番目の息子。国軍の総大将。次期国王の最有力候補者。
- ベオヌーテ博士
- トマリアマ王城仕えの学者。古代文字研究をしている。
- ウルマ
- バンニャバガ国の東部に住むヤードの叔母。隣国で暮らすヤードとミレアを心配している。
- ロン
- ウルマの夫。写実画家。変わった帽子を集めるのが趣味。
- シロ男爵
- タノーラ西部の屋敷の主。裏山で採取した鉱物などを取引する仕事をしている。人相は良くないが丁寧な物腰。
- メリリア
- シロ男爵の屋敷に住み込んでいる少女。とても控えめな女の子。手先が器用で鉱物をアクセサリーに加工するのが得意。
- マチカ
- シロ男爵の屋敷に住み込んでいる女性。物事をはっきり言う性格。
- スーミ
- シロ男爵の屋敷に住み込んでいる婦人。屋敷ではお母さん的な存在。
- カムイ
- ヤードの先祖。その昔、シュトウ界へと移界して首藤家に秘術の存在を教えた。『秘術の書』を編纂し、秘術を後世に語り継がせた。
- クラウノス
- 伝説の雷鳥。虹色の翼と胴体を持つ世にも珍しい大型の鳥。背中に人間を一人乗せて飛翔できる。その身からいかづちを放つことができる。ヤードの相棒的な存在。
舞台設定
作品内では二つの世界が存在する。主人公・愛里が生まれ育った世界「シュトウ界」と、異世界の「カムイ界」である。
カムイ界は16ヶ国から成り立っている。三大陸と複数の島に分かれ、そのうち一番大きな陸地がサント=スペロア大陸で、愛里はこの大陸内を逃避行することとなる。サント=スペロア大陸には四つの国がある。愛里が一番最初に足を踏み入れた国であり大陸内では一番の軍事力を誇るトマリアマ王国、バンニャバガ国、ナダリ国、タノーラ国の四国である。なお、カムイ界には電気は通っていない。電化製品や自動車など文明の利器の類はない。
筆者が自分用メモにざっと描いていた大陸内の地図。逆台形の形。
互いの世界の存在はカムイの一族と首藤家の一族しか知らない。一年に二度だけ別世界へ移動できる。それぞれの世界に同様の双子岩が存在するが(シュトウ界では「天裁崎」(あまたざき)と言い、カムイ界では「カムシュト大岩」と呼ばれている)、この双子岩の間から朝日が昇る時に一定の条件を満たした者が別世界へと移界可能となる。
天裁崎にはモデルがある。宮城県南三陸町と石巻市の境に位置する景勝地「神割崎」(かみわりざき)である。神割崎の岩の隙間から年に二回、2月中旬と10月下旬頃に日の出が拝め、その現象を作品内の設定でそのまま用いている。
神割崎
秘術
ある一族のみにしか伝えられていない人知を超えた「秘術」。カムイ界ではカムイ一族、シュトウ界では首藤家の一族が秘術を伝承している。秘術には二種類ある。
第一の秘術「移界」
別世界へとワープすることを「移界」(いかい)と言う。移界には以下の三つの条件を満たしている必要がある。
- 移界する権利を手に入れている
- 移界したい気持ちがある
- 双子岩から昇る朝日の光を浴びる
1. に関して、現時点の移界者の「血か灰」をその身に付着することで移界する権利が生ずる。血に関しては死に血でなければならない。つまり血か灰いずれにしても前の移界者が死亡しなければ権利は譲渡されない。もしくはカムイ一族の者の「血か灰」でも有効である。移界が長い間おこなわれていなくて現時点での移界者がいない場合は、カムイ一族の血か灰をその身に浴びせるしか移界する手立てはなく、実際にミレアはカムイの子孫である父親の灰をその身にまぶしてシュトウ界へと移界した。
2. に関して、「移界したい」という直接の願望でなくても、たとえば「どこかへ行きたい」「逃げ出したい」というむこうの世界へと通ずる想いが心の内にあれば可となる。
3. に関して、双子岩の間から朝日が昇る現象を、作品内では「日昇」(にっしょう)と称している。別世界へワープするにも、また、自分の世界へ戻るにも日昇の時でなければならない。各々の世界で「天裁崎」「カムシュト大岩」と呼ばれる双子岩はいわば別世界への入口となるため、それぞれの一族は双子岩に部外者を近づけさせないよう日頃から配慮している。また、日昇の時には双子岩へ赴き、移界者が現れた場合は保護と支援をするよう互いの一族の間で約定を交わしている。
元の世界へ帰還できるチャンスは一度だけ。移界した日昇から見て次の日昇に元の世界へ戻る必要がある。この唯一の機会を逃した場合は二度と元の世界へは戻れず、一生別世界で生きて行かなければならない。
第二の秘術「蘇生」
移界者が、移界する権利を有している間に亡くなった場合のみ、第二の秘術で生き返らせることができる。ただし死因が老衰の場合は対象外となる。移界者は権利の強奪のために命を狙われる危険性があるので、その辺を考慮した秘術なのだろうと言われている。
第二の秘術「蘇生」(そせい)を執行するには第一の秘術同様、誰かの「血か灰」つまり生贄的な存在が必要となる。それは、「亡くなった移界者が一番愛する者」「亡くなった移界者のことを一番愛している者」のどちらかである。どちらなのかはネタバレになるのでここでは明示しない。
蘇生にはタイムリミットがある。移界者が亡くなってから一年後までである。その間に然るべき者の血か灰を与えなければ永遠によみがえることはない。
秘術の書
その昔、まだ互いの世界に呼び名がなかった頃にカムイが移界して来た。第一発見者だった首藤家はカムイに親切にした。首藤家を信頼したカムイは、首藤家に秘術の存在を教える。そしてそれぞれの世界をカムイ界、シュトウ界と名付けた。自分の世界へと帰還したカムイは一冊の本を編纂する。それが「秘術の書」。秘術の書の中には秘術に関するありとあるゆることが記載され、カムイのシュトウ界での体験談なども記されている。秘術の書は子孫であるヤードの家に大切に保管されていたが、ジェセルス軍の手に渡ってしまう。
呪力
カムイ界には特殊なちからを持つ呪力者が少数だが存在する。呪力とは、エネルギーとなる自然の力をその身に宿して外へ放出する能力のこと。雷、水、風、火、氷の五属性がある。雷水風火氷はレア度が高い順に並んでいる。雷の呪力者は一番珍しく、以下氷に近づくにつれ扱える者の数が多くなっていく。呪力を使っている間は本人の全身から白い光が発せられる。
呪力の放出の仕方は大きく分けて三種類ある。
(1)掌からの放出
(2)腕をなぎ払っての放出
(3)手や腕を使わずに放出
(1)のように掌から呪力を繰り出すならば、その呪力の規模は掌から放出できる分だけになる。(2)の腕をなぎ払っての呪力はそのなぎ払った範囲の分だけ呪力を起こせる。それらを使わない(3)は規模や範囲の限界がなくなるのだが、その分、コントロールするのは非常に難しく体力の消耗も著しい。手も腕も動かさずに呪力を繰り出すのは至難の業ゆえに、これができるようになれば「呪力を極めた」と言える。
よからぬ目的で呪力を使用する者もいるので、呪力を忌み嫌っている民は少なくない。腕利きの呪力者ならば一人で一国をも滅ぼしてしまう可能性もある厳めしいちからなだけに、ほとんどの国で呪力は公には認められていない。トマリアマ王国内で呪力を使っている瞬間を役人に見られた場合は厳しく罰せられる。
前述したように呪力は五つの属性に分かれるが、ごく稀にどの属性にも分類できない呪力を持つ者が現れる。ジェセルス軍のイル二等兵がこれに当たり、イルは高速で移動でき、且つ高い場所へ跳躍できるという特殊な呪力を所有している。体を光らせている間は体重がどこかへ行ってしまったかのように身軽になる。そもそも呪力はエネルギー波みたいに攻撃性のある能力なので、自身の身体能力を高めるだけのイルのちからが「呪力」なのかという訝りもあるが、それでも呪力以外で人間の体が光るということはあり得ないのでイルのちからも「呪力」と見なされている。
ジェセルス軍
ジェセルスが発足した若者の軍隊である「ジェセルス軍」は、トマリアマ王を崇拝し、国家と君主に忠義を尽くすという姿勢をとっている。国家側もジェセルス軍に対して目を掛けており、本拠地を探していたジェセルス軍に旧王城を譲渡した。実戦での功績もさることながら、ジェセルス軍の華やかな見た目に憧れを抱いて入隊する者も少なくない。強さと人気を兼ね備えた勢いのある軍隊。
ジェセルス軍の階級
区分 | 称号 | 主な人物 |
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将官 | 将軍(=大将) | ジェセルス |
中将 | ライズ、フィレン | |
少将 | ヴォルブ | |
准将 | ||
佐官 | 大佐 | フスト |
中佐 | ||
少佐 | ||
尉官 | 大尉 | |
中尉 | ||
少尉 | ||
准士官 | 准尉 | |
下士官 | 兵曹長 | |
上等兵曹 | ||
一等兵曹 | ||
二等兵曹 | ||
兵 | 兵長 | |
上等兵 | ||
一等兵 | ||
二等兵 | イル |
カムイ界の髪色
カムイ界の住人の髪色は多彩であり千差万別である。カムイ界には髪色の格差が存在する。黒など濃い色が優とされ、薄い髪色(白色に近づく)ほど劣とされる。シロ男爵の屋敷に住み込んでいるメリリアは自身の金色の髪に強いコンプレックスを抱いている。ライズとイルの髪色もカムイ界では劣に分類されるほうだが、ジェセルス軍には現在は髪色の格差は無い。
小ネタ集
- 主人公の苗字を「首藤」にしたのは、神割崎のある南三陸町には須藤(=首藤)という苗字が多いと聞いたことがあったから。また、「シュトウ」は末尾に「界」を付けたときの座りがよかったので「首藤」にした。
- タイトルの「アマタザキ」とは、もちろん「天裁崎」を意味するが、異世界の多彩な髪色を花に見立てて、たくさんの色とりどりの花が咲いている=「数多咲き」という含みも持たせている。
関連リンク
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- 「アマタザキ」商品ページ – Kindleストア
- 神割崎キャンプ場 – 南三陸町観光協会公式ホームページ内
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